黒い雨による被爆者認定とは?対象条件と申請方法

広島への原爆投下後に降った「黒い雨」に遭った人は、一定の条件を満たすことで被爆者として認定され、被爆者健康手帳の交付を受けられます。2021年の広島高裁判決をきっかけに救済制度が見直され、2022年4月から新たな認定基準による申請が始まりました。この記事では、黒い雨による被爆者認定の経緯や対象条件、申請方法、受けられる支援についてわかりやすく解説します。

広島の「黒い雨」とは?

黒い雨とは、1945年8月6日に広島へ原子爆弾が投下された後、広島市内や周辺地域に降った雨のことです。

原爆によって発生した巨大な雲から、すすやちりなどを含む雨が降り、黒く見えたことから「黒い雨」と呼ばれるようになりました。

広島市の記録によると、原爆投下後に発達した積乱雲が北北西へ移動し、午前9時から午後4時ごろにかけて雨が降ったとされています。特に西部の己斐・高須方面や北部の可部方面では、激しい雨が降ったことが記録されています。

黒い雨には放射性物質が含まれていた可能性があり、雨に遭った人々への健康影響や被爆者としての認定をめぐって、長年にわたり議論が続けられてきました。

黒い雨による被爆者認定の経緯

黒い雨による被爆者認定の大きな転機となったのは、2021年7月14日の広島高等裁判所の判決です。

それまで、黒い雨に遭った人への援護は、国が定めた対象区域などによって制限されていました。そのため、実際に雨に遭ったと訴えても、被爆者健康手帳の交付を受けられない人々がいました。

こうした状況のなか、84人の原告が被爆者健康手帳の交付を求めて裁判を起こしました。

広島高裁は、原告全員を被爆者として認める判断を示しました。その後、政府は上告を断念し、判決が確定しました。

さらに、裁判に参加していなかった人についても救済を図るため、2022年4月1日から新しい認定制度の運用が始まりました。

新制度では、従来の援護対象区域に限定せず、黒い雨に遭った状況や一定の疾病の有無などを個別に審査する仕組みが採用されています。

黒い雨による被爆者認定の条件

黒い雨による被爆者健康手帳の交付を受けるには、原則として「広島の黒い雨に遭ったこと」と「障害を伴う一定の疾病にかかっていること」の2つの要件を満たす必要があります。

広島の黒い雨に遭ったこと

1つ目の条件は、1945年8月6日に広島の黒い雨に遭ったと認められることです。

具体的には、雨に遭った場所や時間帯、降雨状況、当時の生活状況などを確認し、2021年の広島高裁判決の原告と同じような事情にあったかどうかを審査します。

当時の住所や通学先、勤務先などを示す資料が求められる場合もあります。

ただし、当時の記憶が曖昧だったり、証明書類が残っていなかったりする場合でも、直ちに対象外になるとは限りません。黒い雨に遭ったかどうか判断できない場合は、申請窓口に相談できます。

障害を伴う一定の疾病にかかっていること

2つ目の条件は、国が定める11種類の「障害を伴う一定の疾病」のいずれかにかかっていると確認されることです。

対象となる疾病には、次のようなものがあります。

疾病の区分 主な例
造血機能障害 再生不良性貧血、鉄欠乏性貧血
肝臓機能障害 肝硬変
細胞増殖機能障害 悪性新生物(がんなど)
内分泌腺機能障害 糖尿病、甲状腺機能低下症
脳血管障害 脳梗塞、脳出血
循環器機能障害 高血圧性心疾患、慢性虚血性心疾患
腎臓機能障害 慢性腎炎、慢性腎不全
水晶体混濁による視機能障害 白内障
呼吸器機能障害 肺気腫、肺線維症
運動器機能障害 変形性関節症、変形性脊椎症
潰瘍による消化器機能障害 胃潰瘍、十二指腸潰瘍

これらは代表例であり、病名が該当するだけで自動的に認定されるわけではありません。障害を伴う一定の疾病に該当するかどうかは、医師の診断書などをもとに審査されます。

なお、白内障の手術を受けて眼内レンズを挿入した人も、制度上は白内障にかかっているものとみなされます。

被爆者健康手帳の申請方法

黒い雨による被爆者健康手帳の交付を希望する場合は、必要書類を用意し、現在の居住地を管轄する自治体の窓口に申請します。

申請に必要な書類

申請には、主に以下の書類が必要です。

  • 被爆者健康手帳交付申請書
  • 健康管理手当認定申請書
  • 医師が作成した所定の診断書
  • 黒い雨に遭った場所や当時の生活状況などを確認できる資料

広島県の申請案内では、黒い雨体験者用の申述書や証明書なども指定されています。

当時の状況を示す資料としては、改製原戸籍や学校の卒業証明書などが考えられます。

必要書類や申請様式は居住地によって異なるため、申請前に管轄自治体の案内を確認してください。

申請窓口と手続きの流れ

申請手続きは、書類の準備、窓口への提出、審査、結果通知という流れで進みます。

広島市に住んでいる場合は、市役所の原爆被害対策部援護課や各区役所の地域支えあい課などで申請できます。

広島市では郵送やメールによる申請を受け付けていないため、指定された窓口で手続きする必要があります。

広島市以外に住んでいる場合は、現在の居住地を管轄する自治体へ問い合わせてください。

提出書類をもとに審査が行われ、2つの要件を満たすと認められた場合に、被爆者健康手帳が交付されます。

被爆者に認定されると受けられる支援

被爆者健康手帳の交付を受けると、無料の健康診断や医療費の自己負担に関する支援などを受けられます。

また、疾病や障害の状況などに応じて、健康管理手当をはじめとする各種手当の対象になる場合があります。

ただし、すべての医療費や手当が無条件に支給されるわけではありません。対象となる医療や給付には、それぞれ条件が設けられています。

特に健康管理手当は、被爆者健康手帳が交付されれば必ず支給されるものではなく、別途認定が必要です。

まとめ

黒い雨による被爆者認定は、2021年の広島高裁判決をきっかけに見直され、2022年4月から新しい制度が始まりました。

現在は、黒い雨に遭った状況と一定の疾病の有無について、個別に審査が行われています。

当時の記憶が曖昧な場合や、申請対象になるか判断できない場合でも、まずは居住地の自治体に相談することが大切です。